7 心の声
内村選手がこの店に来てくれるようになって1カ月が過ぎていた。
相変わらずおせっかいな私は内村選手がタバコを買う度に「約束、忘れて無いでしょうね?」と念押ししながら
1箱、そして時々、半ば無理やりガムを押しつけていた。
もちろんガムは私からのプレゼントとして…
内村選手はガムのお金も払おうとするのだけれどそれだけは受け取れない。
これは私が好きでやってる事だから…
でも2つ欲しいのにひとつしか売らない私がいるこの店に何故来てくれるのだろう?
いつもそれが不思議でならなかった。
内村選手の家がこの店に近いから?
練習場所がこの店の近くにあるから?
考えれば考えるほど分からなくなる。
でもたくさんあるお店の中からこの店に来てくれるという事がたまらなく嬉しかった。
少しずつ会話が増え、距離が縮まっているような気がして凄く嬉しかった。
でもあの人はお客様…
メダリストで、とても有名なお客様…
どこまで行っても交わることのない平行線の遠い存在。
気をつけなくちゃ!
『恋しちゃいけない人だよ!』
頭の中で声がした。
『釣り合うわけないでしょ!』
心の中で声がした。
分かってるよ…
そんなコト、最初から分かってるよ…
なぜか涙が溢れていた。
8 この手はきっと届かない
「いらっしゃいませ~!」
いつものように笑顔で挨拶したその先に内村選手が立っていた。
内村選手は、いつものように雑誌のコーナーには行かずまっすぐレジにいる私の方に歩いて来た。
「おはよう!今日は渡したいものがあってさ…」
「おはようございます…」
「来週、国内選手権あるんだけど観に来るかなと思ってチケット持って来たんだ…いつもガム、貰ってるお礼!」
「ええっ?ガム10個分でもチケット買えませんよ…」
「ふ~ん…受け取ってくれないんだ…オレの応援すんの嫌なんだ…」
「――――――嫌なワケ無いじゃないですか!体の事心配してタバコやめろって言ってるくらいなのに…」
「だよね!じゃ、これ!!あのおばさん誘って観においで!」
そう言って笑いながらチケットの入った封筒を差し出した。
「ありがとう…」
溢れ出る嬉しさをかみ殺すように呟いた。
「じゃ、オレ練習、行って来る!」
えっ!?
わざわざチケットを渡しに来てくれたの?
何も買わずに、ただこれだけの為に来てくれたの?
店を出て行く内村選手の背中が涙で滲んで見えた。
封筒を開けると土曜日に行われる決勝のチケットが2枚入っていた。
思わずギュッとチケットを胸に抱き締め流れる涙を拭うことなく私はその場にただ立ち尽くしていた。
すぐ側にいても触れることの出来ないあの人は
手を伸ばしてみても届かない遠い存在
空に輝く太陽のようにキラキラみんなを照らし
人々に夢と希望を与える
どこまで行っても交わることのないあの人に
思いはきっと届かない
どこまで行っても届かない…
伸ばした手をそっと下ろした
解説 あとがき
計画性も無く、プロットも書かずに書いていたら時間軸がめちゃくちゃなことに気付き今日書いた2時間分の文章がパァになってしまった…orz
さて―――
★が自分の気持ちに何となく気付いたようです。
でも有名人に恋なんてと躊躇してしまいます…
自分にはそんな経験が無いけど、おそらく同じ感じなのかな…
シメはポエマーになっております
笑って見過ごしてください!
(この物語の成分は主の妄想100%で出来ています。)