入社式
4月1日。
今日、入社式だった企業もたくさんあったのでは?
我が社も、当然のことながら今日、入社式が本部であったようだ。
中ちゃん(23歳 男)が、我が部署にバイトとして配属されたのは約3年前のこと。
大学受験に失敗しGSでのバイトを経て我が社にバイトとして入ってきた。
当時の我部は一人辞めたあとだったので、中ちゃんが来てくれたと、皆とても喜んだ。
でも、若い男の子…(当時19才)
すぐに辞めてしまいそうで心配したのを覚えている。
中ちゃんが、うちにバイトとして入ってきた経緯はこうだった。
進学校に通っていた彼は受験に失敗。
浪人してでも大学に行きたかったのだが彼の母は離婚し再婚していた。
実の父親なら浪人することを懇願できただろうが義父に対しては言えなかったそうだ。
中ちゃんが、入ってきて1週間もしない頃、二人で話す機会があった。
「この会社はね、バイトから正社員になった人がいるんだって。だから頑張ったら正社員になれるよ!」
『辞められたら困る…』
そんな危機感から言ってしまったのか…
でも、バイトから社員になった人は本当にいたのだ。
この時、私は「正社員」という言葉のエサで中ちゃんを縛ってしまったような気がして後ろめたさを感じていた。
1年、2年…
中ちゃんが正社員になれるという話は持ち上がっては来なかった。
『余計なこと言わなきゃよかった…』
嘘をついてしまった気がして心苦しかった。
3年目の去年の年末。
中ちゃんの正社員としての話が急浮上した。
前にいたチーフが中ちゃんを会社の勉強会などに誘っていた成果だったのかもしれない。
年末にある試験に合格すれば正社員の道が開けるという。
難しい試験だったらしいが、中ちゃんはそれに合格した。
今日は4月1日。
中ちゃんの入社式だった。
おめでとう!
頑張ったね!
諦めなくてよかったね!!
今日は4月1日。
エイプリルフール。
でもあの日、言った言葉は嘘じゃなかったよ!
頑張ったら正社員になれるよ!
入社おめでとう!中ちゃん!!
