「ありがとう。また来いよ。」
今日は、日曜日。
息子から電話があり、父のお見舞いに一緒に行きたいとのこと。
カンナちゃんが生まれて約2ヶ月。
父にカンナちゃんを見せたいという。
父には生まれたことを報告したけれど、覚えているのだろうか?
病院に着くと、父は一人部屋から4人部屋へと移動していた。
部屋は留守になっていて、父はナースステーションにいるようだった。
看護師さんに声をかけると、父を談話室へと連れてきてくれた。
車椅子に座ってる!!Σ(゚艸゚〃)
再入院してから、父のベッドに横たわった姿しか見ていなかったので驚いた。
快復に向かっているのだろうか?
「もって3ヶ月」
先生は、そう言った。
なにかの間違いではなかろうか?
父のお見舞いに行くたびに、少しずつだけれど良くなっているような気がする。
「カンナちゃんだよ~!」
父のそばに、カンナちゃんを連れて行く。
カンナちゃんの顔に近づき、うすらぼんやりとしか見えない目で、
生まれたばかりのひ孫の顔を一生懸命覗き込む父。
口元は、かすかに微笑んでいる。
父の胸にカンナちゃんを近づけると、不自由ながらも、しっかりと支える父の手。
思わず泣きそうになった。
父とは会話できない。
話すことができなくなっているようだ。
言っていることは、分かるようで問いかけに頷いたりできる。
自分の気持ちを伝えることが出来ないのは辛いね。
思っていることを言葉に出来ないのは悲しいね。
父は、きっとカンナちゃんに「かわいいねぇ~」と言いたかったはずだ。
「また来るね。」
ひ孫たちに代わる代わる手を握られ嬉しそうにしていた父。
看護師さんに「ひ孫さんね?かわいいねぇ~」と言われ頷いていた父。
まだ喋れる頃、帰り際には「ありがとう。」と言っていた父だけど、今日は右手を上げた。
「また来るからね。」
「ありがとう。また来いよ。」
言葉にはならないけれど、ちゃんと伝わったよ。
