U どりーむ 16
23 マスク
食事を済ませ食器を洗う★の後姿を眺めながら話すタイミングを模索する。
今度こそ言うぞ!
ゆうべ予習したセリフは―――
心の中、呪文のように何度も何度も繰り返した。
片づけ終わり、★がタオルを手にしたのを見計らって「話があ――― る…」
パン パン パパン!!
話があるんだ…そう言うのと同時に窓の外、大きく乾いた音がした。
「今の音なに?」
「そうだ!!近所の神社でお祭りがあるって言ってた!きっと花火の音ですよ!!」
祭り…?花火か…そう言えばずいぶんと観てないなぁ…
「花火か―――行ってみよっ!!」
パニくった気持ちを落ち着ける時間にもなるかもしれない…
「内村さん…さっきも言いましたけど、人がたくさんいるトコは大騒ぎになっちゃいますよ!有名人ってとこ自
覚して下さいね…」
そう言った★の顔が少し残念そうに見えた。
★はきっと花火を観に行きたいに違いない…
「大丈夫!コレあるから!!」
オレはバッグの底、眠っていたモノを取り出し着けて見せた。
「マスク…」
「風邪、流行ってる時の予防用にいつも持ち歩いてるんだ。これならオレだって分かんなくね?」
「う―――ん…目が…目だけでも内村さんって分かっちゃう…かな…?」
オレの目をじっと見つめ眉間にしわを寄せうんうん唸る★がカワイイ…
「オレ、目だけ内村に似てるって言われるっすけどマスクとったら全く別モンっすよ!?」
いつもよりずっと低めの声を出し、別人を装って言ってみせた。
「なに~!?その声!!笑っちゃう!!」
「な!?これでいいだろ?」
★は笑いながら頷いた。
玄関を出て音のする方を目指して歩く―――
歩くたび揺れる キミの手がささやいてる
「触ってもいいよ…」って
袖口から見え隠れする キミの手が誘ってる
「手、繋いで…」って
手を伸ばさずにはいられなかった。
自分の気持ちさえも言ってないのに…
思い切って、すぐ横を笑顔で歩いていた★の手を取った。
オレの手に★は一瞬ビクッとなって驚いた顔をしたが、その顔がみるみる嬉しそうに赤く染まっていくのを見
てホッと安心した。
嫌な顔して振りほどかれるのが怖かったんだ…
心臓が手のひらに移動しているかのようにドキドキと脈打っていた。
テレ隠しに繋いだ手を前後にブンブン振ってみた。
楽しそうに笑う★の顔を見て、繋いだ手を更にギュッと握りしめた。
離したくない…
この手をずっと離したくない―――
溢れ出る感情がオレを突き動かす。
言うなら今だ!
「こうへい!ダメよ!!」
背後から名前を呼ばれ振り返った。
「ママ~!早く行かないと花火、終わっちゃうよ~!!」
「ひとりで先に行っちゃうと迷子になるわよ!」
「はやく~!!」
4~5歳くらいの男の子が小走りでかけて来た。
花火を観に行く親子連れだったのか…
一瞬、自分の事を呼ばれたのかと思い驚いてしまった。
「あの男の子、こうへい、って名前なんだ…」
フフッと★が笑う。
「オレの事かと思ってビックリしたよ…」
驚いて繋いだ手を離してしまったことを後悔した。
いつも肝心なとこで邪魔が入る。
ついてないな…
公園に着くと大きな木の下に据えられたベンチに腰を落ち着かせた。
大きな花火大会のような豪華さは無いけれど、それなりに腹の中ズンと響く音に合わせキラキラと打ち上げ花
火が舞い上がる。
空に舞う小さな光に合わせ★の顔もキラキラ揺れる。
花火よりも今は、あきるほど★の顔を見ていたい気分だ。
「綺麗―――――― ね?」
★はそう言ってオレの方に顔を向けた。
目と目が合う。
★に吸い寄せられるように顔を近づけた。
キス――――――したつもりだった…
オレのバカヤロー!!
マスクをしていたことに気付かなかったヘタレで間抜けなオレだった。
解説 あとがき
試合中はカッコよくて男らしいステキな内村クン。
私の中でプライベートの内村クンは、おちゃめで、ちょっと天然なとこもあるのかな?と妄想してます。
そんなカワイさ?を書いてみたくなりました。
(この物語の成分は主の妄想100%で出来ています!)
